【知っておきたい違い】美容皮膚科と皮膚科における「安全性」の考え方
皮膚科と美容皮膚科は、どちらも「皮膚」を扱う専門家ですが、その治療の目的が根本的に異なるため、「安全性」に対する考え方やリスクの捉え方にも大きな違いがあります。
この違いを理解することは、あなたが目的に合わせてクリニックを選ぶ上で非常に重要です。
1. 治療目的と安全性の基準の違い
皮膚科と美容皮膚科の最も大きな違いは、何をもって「成功(ゴール)」とするかです。これが安全性に対する基本的な考え方を決定します。
項目 | 皮膚科(一般皮膚科・保険診療) | 美容皮膚科(自由診療) |
治療目的 | 病気の治癒、または症状の改善・抑制。 | さらなる美の追求、患者の理想の実現。 |
安全性基準 | 治療の必要性が最優先。確立された標準治療の範囲内でのリスク最小化。 | 結果の最大化とダウンタイムの管理。患者の許容範囲内のリスクを伴うことが多い。 |
リスクの捉え方 | 避けなければならないもの(特に重篤な副作用)。 | 結果を得るために管理すべきもの(例:ダウンタイム)。 |
皮膚科:「病気の治癒」と「標準治療」の遵守
一般皮膚科の安全性は、国が定める保険診療のルールと標準治療に基づいて確立されています。
科学的根拠(エビデンス)の重視:
使用する薬剤や治療法は、長年の臨床データに基づき、有効性と安全性が国に承認されています。「この病気にはこの治療法」という標準的な治療を厳密に守ることが安全性の基本です。
リスクの排除:
治療の目的は「健康を取り戻すこと」であるため、重篤な副作用や回復不能なダメージにつながるリスクは極力排除されます。
副作用の考え方:
副作用(乾燥、赤みなど)が出た場合、治療の中断や薬の変更などを行い、安全性の確保が最優先されます。
美容皮膚科:「結果の追求」と「リスクの許容」
美容皮膚科の治療は自由診療が中心です。保険診療の枠を超えて、より高い効果や理想の見た目を追求するため、安全性に対する考え方が異なります。
侵襲性(ダメージ)の許容:
高い効果を得るためには、レーザーや注入などで一時的に肌にダメージを与える(=侵襲性を伴う)ことが必要になる場合があります。この「ダメージ」は、肌の再生を促すための意図的なリスクと捉えられます(例:ダーマペン、強いレーザー)。
ダウンタイムの管理:
美容皮膚科では、腫れや赤み、皮むけなどの**「ダウンタイム」も、効果を得るために一時的に許容すべきリスク**として捉え、適切なアフターケアによって管理します。
未承認機器の使用:
海外で認可されていても、日本の厚生労働省の承認を受けていない最新機器が使用されることがあります。この場合、安全性は医師の知識と技量に大きく依存します。
2. 医療行為に対する責任と期待値の違い
両者の安全性の考え方の違いは、最終的に患者とクリニック間の責任範囲と期待値にも反映されます。
① 患者が負う費用とリスクの度合い
皮膚科: 費用は抑えられ、リスクも限定的ですが、**「病気の治癒」**という最低限のゴールを目指します。
美容皮膚科: 高額な自由診療となり、「より美しくなる」という高い結果を目指します。その分、副作用やダウンタイムといった患者が許容すべきリスクの幅も広くなります。
② 安全性の担保が「医師の技量」に大きく左右される
一般皮膚科の治療は、ガイドラインに沿った手順で行われるため、医師間で大きな差が出にくい傾向があります。
一方、美容皮膚科では、注入量や機器の出力、針の深さといったパラメータを医師が個別に調整します。そのため、医師の経験、知識、美的センスが治療効果と安全性の両方に直結します。
例えば、ヒアルロン酸注入の安全確保は、**「解剖学的知識」と「万が一の血管閉塞への対処能力」**といった、医師個人の高度な技術に依存します。
3. 安心して治療を受けるために必要なこと
美容皮膚科の治療は自由診療であるため、患者自身が**「何が許容できるリスクで、何が許容できないリスクか」**を理解し、主体的にクリニックを選ぶ必要があります。
リスクの事前確認: 施術前に、ダウンタイムの症状、期間、重篤な副作用の可能性を必ず医師に確認しましょう。
医師の選択: 経験豊富で、万が一のトラブルへの対応体制(提携病院や緊急時の連絡先など)が整っているクリニックを選ぶことが、美容皮膚科における安全性を高める最も重要な対処法となります。
過度な期待を避ける: 宣伝されている「理想の姿」だけでなく、治療に伴うリスクや限界についても冷静に理解することが、安全な美容医療を受けるための基本姿勢です。