美容皮膚科に「皮膚科専門医」が必ずいるとは限らない!その理由とクリニック選びのヒント


美容皮膚科を選ぶ際、「皮膚の専門家だから、もちろん皮膚科専門医が診てくれるはず」と思っていませんか?実は、美容皮膚科という看板を掲げていても、そこに日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医が必ずしもいるわけではありません。

これは、日本の医療制度と「美容医療」の特性に深く関わる、知っておくべき重要なポイントです。


1. 医師免許があれば「美容皮膚科」の診療は可能

最も大きな理由が、日本の医師免許制度にあります。

  • 医師免許の普遍性:

    • 日本では、医師国家試験に合格し医師免許を取得すれば、基本的にどの診療科を標榜し、診療(医療行為)を行っても法律上の問題はありません。

    • 例えば、外科出身の医師が美容皮膚科のクリニックを開業することも可能ですし、内科出身の医師が美容点滴を行うことも可能です。

つまり、「美容皮膚科」という名称は、特定の専門資格がなくても掲げることができるため、「皮膚科専門医」の資格が必須ではないのです。美容医療は自由診療であり、医師個人の裁量で技術を学び、提供することができます。


2. 「皮膚科専門医」の資格は時間と実績が必要な公的な証明

では、「皮膚科専門医」とはどのような資格なのでしょうか。この資格は、日本皮膚科学会が定めた非常に厳格な基準をクリアした医師にのみ与えられます。

  • 資格取得の道のり:

    • 医師免許取得後の初期臨床研修(2年間)に加え、5年以上の長期間にわたる皮膚科の専門研修が必要です。

    • 大学病院などの認定研修施設で、様々な皮膚疾患や手術の経験を積み、専門医認定試験に合格する必要があります。

この資格は、アトピー性皮膚炎、湿疹、皮膚がんなど、保険診療で扱うあらゆる皮膚疾患の診断と治療において、十分な知識と経験があることを証明する、公的な専門性の証です。

逆に言えば、美容医療を主戦場と決めた医師は、この長い専門医研修の道を選ばず、すぐに美容医療の技術(レーザー機器の操作や注入技術など)の習得に集中するケースも少なくありません。


3. 美容医療は「皮膚疾患治療」とは別の専門領域

美容皮膚科が扱う「シミ、しわ、たるみ、脱毛」といった悩みは、一般皮膚科が扱う「皮膚炎、感染症」といった病気とは性質が異なります。

  • 美容の専門性:美容医療では、最新の美容機器(レーザー、ハイフなど)の特性を理解し、患者さんの美的な要望に応えるセンスや技術が重要になります。これは、一般皮膚科の専門医研修ではほとんど扱われない領域です。

  • 資格の名称問題:「美容皮膚科専門医」という名称は、現在の日本の制度上、公的な専門医資格としては認められていません。(※形成外科など、美容と関連性の高い専門医資格は存在します)。

そのため、**「皮膚科専門医ではないけれど、美容医療の経験が豊富で技術の高い医師」**は多数存在します。


4. クリニック選びでチェックしたいポイント

美容皮膚科医に「皮膚科専門医」の資格があるかどうかにかかわらず、患者さんがより安心して治療を受けるためには、以下の点をチェックすることが大切です。

チェックポイント専門医の有無との関連なぜ重要か
診療経験・実績専門医でなくても実績があれば信頼できる美容施術の経験年数症例写真の公開状況を確認しましょう。
カウンセリングの質知識の深さや患者への向き合い方医師が診断や治療計画について、リスクも含めて丁寧に説明してくれるか。
合併症への対応力形成外科の知識や経験が役立つ万が一トラブルが発生した場合に、適切な処置や連携体制があるか。
所属学会積極的な学習姿勢を示す日本美容皮膚科学会日本形成外科学会など、美容医療に関する学会に所属し、最新知識を学んでいるか。

皮膚科専門医の資格は、皮膚の構造や病態についての医学的知識の裏付けがあるという点で、大きな信頼の証です。しかし、美容皮膚科の治療においては、その医師がどれだけ美容医療に特化して学び、経験を積んでいるかも同じくらい重要になります。

専門医資格の有無だけでなく、その医師の美容医療への熱意と実績も併せて確認し、安心して任せられるクリニックを選びましょう。